対談 日本のエコ技術が地球を救う

2009年06月07日

【公明新聞掲載記事】

 6月の環境月間に続き、7月7日には公明党の提案で実現した「クールアース・デー」(地球温暖化対策の日)を迎えます。そこで、斉藤鉄夫環境相(公明党衆院議員)と山本良一・東京大学生産技術研究所教授に、温室効果ガスの排出を最小限に抑える低炭素社会づくりなどについて語り合ってもらいました。

環境崩壊の“臨界点(ティッピングポイント)”は近い 山本
政策の実現(日本版グリーン・ニューディール)に全力を挙げる 斉藤

温暖化解決へ環境産業革命を

斉藤環境相 

斉藤鉄夫環境相 昨年の北海道洞爺湖サミットは、国民が地球温暖化問題を考える上で大きな契機となりました。この100年間で地球の表面温度は0・74度上昇しています。温暖化の現状をどう見ますか?

山本教授

 山本良一東京大学教授 科学者たちからの警告は明確です。温暖化の加速を裏付ける証拠が次々と示されています。その一つが北極海氷の急激な減少です。

 2007年9月、北極海氷の面積は413万平方キロメートルまで縮小し、過去最小を記録しました。1979年から2000年までの9月の海氷面積の平均値は674万平方キロメートルですから、約40%減少したことになります。

 予測を超えたスピードで、このままでは夏の北極海氷は今後10〜20年で消滅する恐れがあります。

 斉藤 北極海氷は地球の“エアコン”として重要な役割を果たしています。

 山本 北極海氷は太陽光線を反射しており、地球を冷却する役目を担っています。もし、この氷が解けると、太陽光線はすべて海に吸収されるわけで、温暖化は3倍速で進むと予測されています。このほか、急速に進むグリーンランド氷床の融解なども深刻です。

 斉藤 日本でもゲリラ豪雨による洪水被害が多発するなど影響が顕著です。

 山本 温暖化は戦争の危機をも招きます。温暖化による水や食料の不足は難民を生み、やがては資源をめぐる争いにつながります。実は、気候変動は安全保障上の問題でもあるのです。

 日本は今、2020年までにめざすべき温室効果ガス削減の中期目標をめぐり、大詰めを迎えています。地球環境の劣化は人々の心をもショクみます。そのまた逆も然りです。人間は環境と常に一体の存在であることを忘れてはいけません。

 斉藤 全く同感です。洞爺湖サミットを経て、気温上昇の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの大幅削減と、環境革命の必要性は、今や世界の共通認識となりました。日本は、この流れをさらにリードし、加速させたいと考えています。

2005年(左)と2007年の北極海氷の比較写真。白い部分が海氷(米国国立雪氷データセンター 提供:山本研究室) 

2005年(左)と2007年の北極海氷の比較写真。白い部分が海氷(米国国立雪氷データセンター 提供:山本研究室)

山本 そのためには、成長と両立する低炭素社会を世界に先駆けて実現する必要があります。そのカギを握るのが、日本が世界に誇る環境技術です。温暖化問題の解決には、経済と一体となった環境技術革新、環境産業革命が不可欠です。

 斉藤 世界は今、経済危機を克服するために、環境対策を柱とする経済の立て直しにこぞって乗り出しました。わが環境省も、4月に環境重視の経済活性化策「緑の経済と社会の変革」(日本版グリーン・ニューディール)を打ち出し、既に実行段階にあります。

 省エネ家電普及のためのエコポイント制度もその一つで、これらを支えているのが日本の最先端のエコ技術です。技術革新でその優位性をさらに高めることは、日本の経済力、国際競争力の強化に直結します。


グリーンランド氷床の夏の雪解け水(J.Hansen 提供:山本研究室)

グリーンランド氷床の夏の雪解け水(J.Hansen 提供:山本研究室)

低炭素社会に先駆し国際貢献

 山本 国際社会はまさに低炭素大競争時代です。日本には環境に配慮したエコ製品(エコプロダクツ)が数限りなくあります。しかも、切れ目なしに開発されている。例えば節水トイレにしても、何社からも発売されています。こんな国はほかにありません。

 斉藤 今年も12月に国内最大級の環境展示会「エコプロダクツ展」が開かれると伺いました。

 山本 多数の出展が予想されます。低炭素社会づくりで日本が世界をリードするには、こうしたエコ製品やサービスを国内外に発信し、利用される体制を早急につくる必要があります。

 斉藤 環境性能の高い良質な製品・サービスを供給・開発する企業と、消費者をつなげる仕組みですね。

 山本 そのためには、国民が環境性能や品質を見極める目を養うことが大切です。グリーン購入検定を導入してはどうでしょうか。環境偽装も見抜ける上、エコ製品の一層の普及と技術開発が期待されます。

 日本には間違いなく、世界をリードできるエコ技術力があります。しかし、油断していると、すぐに他国に抜かれます。中国などあらゆる国が低炭素社会へ走り出しているのですから。

 斉藤 日本は今、京都議定書での約束に従って温室効果ガス排出量の1990年比6%削減に取り組んでいます。しかし、その目標達成には政策総動員で取り組まねばならない状況です。

 まさに日本は、政策の大転換期にあると深く自覚しています。また、温暖化対策の強化を主張し、リードしてきたのは環境立国をめざす公明党です。環境相、そして公明党の国会議員として低炭素社会づくりに全力を挙げる決意です。

 山本 気温上昇がある一定のラインを超えると、地球環境の様相は一変します。環境崩壊を招くティッピングポイント(臨界点)が近づいています。金融崩壊は再生可能ですが、環境崩壊は再生不可能です。ぜひ、日本版グリーン・ニューディールを強力に推進してください。

東京大学 生産技術研究所教授 山本 良一氏(やまもと・りょういち) 専門は材料科学、エコデザイン。国際グリーン購入ネットワーク会長。環境展示会「エコプロダクツ展」実行委員長。「温暖化地獄Ver.2」など著書多数。62歳。

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