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原発事故の現状と課題

インタビューに答える斉藤鉄夫

緩慢な情報発信に怒り
工程表 根拠を丁寧に説明すべき

 東京電力福島第1原子力発電所の事故では、震災から2カ月以上を経て1号機の核燃料が溶け落ちる炉心溶融が判明。東電は事故の収束に向けた工程表を改定したが、収束の見通しは依然、不透明だ。事故の現状と政府、東電の対応などについて、公明党の斉藤鉄夫・東電福島第1原発災害対策本部長(幹事長代行)に聞いた。

――東電が今月15日に、地震発生の翌朝には1号機で炉心溶融していたとする解析結果を発表しました。

斉藤本部長 事故の初期段階から炉心溶融が起きていたのに、今頃になって知らされた。「政府、東電の原発対応・情報発信はどうなっているのだ」と、国民は激しく怒っている。私も同感だ。政府は「水位計が壊れていた」と言い訳しているが、それも信用できるかどうか。そこに情報隠しや、あえて「最悪の情報を国民に知らせないほうがいい」という政府の恣意が働いていたとしたら、それは大変な問題だ。公明党として、徹底して真相を究明していく。

――福島第1原発事故の現状をどう見ますか。

斉藤 二つの点で大変憂慮すべき事態が進んでいる。一つは1、2、3号機に共通したことだが、おそらく炉心溶融が起きて、圧力容器と格納容器に破損が生じ、放射能の漏洩が続いている。核分裂生成物を多量に含む溶融炉心の放射能濃度は非常に高く、そこに直接触れた汚染水の流出は、その最たるものだ。
 二つ目は3号炉だ。直近では温度の低下が伝えられているが、温度が急に上がったり下がったりしている。1号炉は水素爆発を防ぐために窒素を入れているので水素爆発を起こすことはないが、2、3号炉は、まだ窒素を入れられる状況ではない。2、3号機は格納容器の中で爆発が起きる可能性もある。格納容器の中で水素爆発が起きた場合、放射能が周囲に飛散し、1~4号機まで作業員も含めて誰も近づけなくなる。予断を許さない状況が続いている。

――東電の工程表見直しについて。

斉藤 政府や東電の現状認識は甘いと言わざるを得ない。汚染水は莫大な量だ。循環させて原子炉を冷温停止させるために使うというが、技術的な根拠は示されていない。甘い見通しでは国民の不安を解消するのは難しい。東電は工程表の根拠を内外にもっと説明する必要がある。

――菅政権の原発対応について。

斉藤 法律に定められる手続きを無視した、思いつきや独断専行が目立つ。原発の初期対応にしても、首相の視察は原子力災害特別措置法に則ったものではなく、かえって事態を悪化させた可能性さえ指摘されている。

――今後について。

斉藤 国際社会は今の日本政府を信用しなくなってきている。1号機の炉心溶融は当初から可能性が指摘されており、「今までの情報公開は何だったのか」と思われている。放射性物質は微量ながらも諸外国に達し、汚染水の海への放出についても近隣国に事前に知らせることもなく、強い批判を浴びた。
 国際社会からは、「日本は関係国に迷惑をかけておきながら、情報共有は渋り、ウソまでつく」と見られている。これからは態度を改め、「隠し立てをせず、事故で得られた教訓は全人類と共有します」という姿勢を出せるかどうかが、日本が国際的な信用を取り戻せるかどうかの分かれ道だろう。

【公明新聞より転載】

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