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土井隆雄宇宙飛行士と対談

美しい星 地球を永遠に/希望輝く未来を子どもたちへ

【公明新聞掲載記事】

「きぼう」日本実験棟の模型を前に(右から)北側、土井、斉藤の各氏

「きぼう」日本実験棟の模型を前に(右から)北側、土井、斉藤の各氏

世界15カ国が参加して、地上約400キロメートル上空で建設が進む国際宇宙ステーション(ISS)。今年3月、日本人宇宙飛行士の土井隆雄さんは、 ISSにわが国初の有人宇宙施設「きぼう」日本実験棟の船内保管室を設置する任務に成功しました。土井さんと公明党の北側一雄幹事長、斉藤鉄夫政務調査会 長に、宇宙開発や地球の美しさ、子どもたちの未来などについて語り合ってもらいました。

 斉藤 土井さんが宇宙に興味を持ったきっかけは何ですか。

 土井 中学生の時、アポロ11号が打ち上げられ、人類初の月面着陸に成功しました。そのころから星を見るようになり、宇宙が好きになりました。高校時代は天文部に所属し、火星を観測したりして「宇宙で何か仕事をしたい」と思っていました。

 北側 私たちも同世代なので、土井さんの気持ちがよく分かります。私も望遠鏡を親にせがんで買ってもらい、毎晩、物干し場からカシオペア座や北斗七星を眺めていました。当時は高い建物もなく、空もきれいでした。私が通っていた中学校には天文部がなかったので、私は気象部に入っていたんです。

 斉藤 私たち3人は皆、“宇宙を夢見る少年”だったわけですね(笑い)。実際に、土井さんが宇宙飛行士をめざされたのは、いつごろですか?

 土井 「自分でロケットを造って、宇宙に行きたい」という夢を追って、大学でロケット工学を勉強した後の1983年、私が大学院を終えた時ですね。宇宙開発事業団(現在の宇宙航空研究開発機構=JAXA)と米航空宇宙局(NASA)の共同宇宙実験で、搭乗科学技術者と呼ばれる、日本初の宇宙飛行士の募集があり、それに応募したのが始まりです。そして85年に、毛利衛さんと向井千秋さんと私の3人が選ばれました。

 斉藤 そうでしたね。日本人初の宇宙飛行士に3人が選ばれて、まず毛利さん、次いで向井さんが実際に宇宙へ飛ばれて、その後、なかなか土井さんにチャンスが回って来ませんでしたね。当時、焦りのようなものはありませんでしたか?

 土井 「どうしたら飛ぶチャンスが来るか」ということは常に考えていました。そこで、宇宙開発事業団に働き掛け、96年にNASAのミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)になることができました。その結果、97年に最初のフライトを行うことができました。

 北側 そして今回、“宇宙好き”が多い今の50歳代の代表として、日本人宇宙飛行士としては最高齢で宇宙に飛ばれたわけですね。

 土井 はい。あえて意識したことはないのですが……何か、そのように言われているようです(笑い)。

 斉藤 これまでに2回、宇宙に飛び立たれて感じられたことは何ですか。

 土井 最初の宇宙飛行で地球の姿を見た時、とても大きなインパクト(衝撃)を受けました。地球は素晴らしくきれいな星です。海の青さと雲の白さで彩られた丸い地球が、暗黒の宇宙を背景に浮かんでいる。その美しさは、何か尊厳さを感じさせるような、この素晴らしい星に生まれて本当に良かったという思いを実感させます。

 北側 本当にうらやましい話ですね。誰もが「私も宇宙へ行ってみたい。宇宙から美しい地球を見てみたい」と思いますが、同時に「年を取ってしまったから無理だろうな」と思う……(笑い)。

 土井 昔のロケットだと強靱な身体が必要でしたが、現在のスペースシャトルなら約1年の訓練に耐えられる「健康で頑張れる人」であれば、誰でも宇宙へ行けます。年齢は関係ありません。実際に最も高齢で宇宙へ飛んだジョン・グレン米上院議員(当時)は77歳でした。

 北側 宇宙から見れば「美しい星」である地球も、地上では環境破壊や温暖化などが問題化しています。土井さんが宇宙飛行をして、地球環境について何か感じられたことはありますか。

 土井 宇宙から地球をよく見ると、人間の負の営みが見えるようになりつつあります。例えば、南アメリカ上空で焼き畑の煙が10カ所以上から上がるのが見えました。畑を広げるのでしょうが、どんどん森林がなくなっていくことは悲しいことです。

 北側 公明党は、地球温暖化対策などを話し合う今年の北海道・洞爺湖サミットに向け、開催初日の7月7日を「クールアース・デー」に制定しようと取り組んでいます。CO2(二酸化炭素)削減の意識啓発のため、職場や家庭のライトダウンを行い、天の川を見ようというイベントも提案しています。私たち政治家の責任として、美しい地球を永遠に残すために、環境問題に全力で取り組みます。

 斉藤 日本は今、閉塞的な状況にあるといわれていますが、これを打ち破るには、宇宙開発など科学技術分野での日本の発展がカギを握っているのではないでしょうか。

 土井 宇宙開発は一部の人たち、一部の産業だけでなく、すべての人々のためになり、すべての産業に影響します。宇宙開発をもっと自由に行えるような環境を整えていただきたいと思います。

 斉藤 日本は資源に乏しい国ですから、科学技術の力で、日本の存在感を際立たせていくことが大切です。そうした意味で、ISSが完成し、日本の実験施設である「きぼう」が機能し始めれば、宇宙空間での実験が行えるようになり、新しい技術の誕生が期待できます。

 土井 その通りです。

 北側 将来、宇宙飛行士になりたいと思っている日本の子どもたちもたくさんいると思います。そうした子どもたちの未来のために、土井さんから何かメッセージをお願いします。

 土井 ぜひ地球の自然に親しんでもらいたいと思います。昆虫採集や野山を駆け巡ったりして、自然を通して生き物の大切さや、自然そのものを実感してほしい。私もそうしました。私が小さいころは、パソコンやTVゲームで遊ぶことはありませんでした。今の子どもたちがそうしたバーチャルリアリティーという架空の世界で遊び、それだけで満足してしまうと、自分自身を軽く思うようになるのではないかと心配です。偽物の世界ではなく、本物の世界にふれてほしい。

 斉藤 子どもたちには、本当のものを知ってほしい、本当の自然や、本当の生命を実感してほしいということですね。

 土井 はい。本物の自然に親しみ、生命の素晴らしさを知れば、そこから人間としての豊かな感性が生まれます。そして、自分の生命を見詰め直せば、生命の大切さが分かり、自分が何をしたらよいかが分かるはずです。

 北側 科学技術の最先端分野で活動されている土井さんからの極めて貴重なご指摘だと思います。

 土井 自然に親しみ、生命の素晴らしさを知った上で宇宙に目覚める。私はそうでした。そういう形で子どもたちが成長してほしい。誰もが宇宙をめざす必要はありません。一人一人の子どもたちが自分の中の宇宙をめざしてもらえばよいと思います。

 北側 「本物に接していくことが大事だ」という土井さんの指摘は、子どもたちの教育についても重要なポイントになります。土井さんの同世代として、アメリカでの今後ますますのご活躍、ご健闘を祈ります。

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