警戒区域の指定促す
危険性の公表も住民に早く
広島市北部で大雨による大規模土砂災害が発生したことを受け、公明党は3日、「土砂災害防止法改正検討プロジェクトチーム(PT)」を発足し、活発な議論をスタートさせた。近年、大雨に伴う災害が全国各地で増加していることも踏まえ、防災・減災対策の重要性や法改正のポイントなどについて、同PTの斉藤鉄夫座長(党幹事長代行)に聞いた。
―近年、各地で大雨による災害が多発している。
斉藤鉄夫座長 原因の一つが地球温暖化であることは明らかだ。そのため公明党は、再生可能エネルギーの普及拡大をはじめ、地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出抑制策に一貫して取り組んでいる。一方で、そうした取り組みの効果は短期間で表れない。だからこそ、国民の生命と財産を守る防災・減災対策が重要になる。
数回にわたって広島市の土砂災害現場を視察したが、そこで強く感じたのは、あれだけの雨が短時間に集中すれば、同様の被害は全国どこでも起こり得るということだ。事実、広島市では、「まさ土」と呼ばれるもろい地質の地域だけでなく、固い地質の地域でも土砂崩れが発生していた。
―土砂災害防止法の改正に向けたポイントは。
斉藤 広島市で被害の大きかった地域では、同法に基づく土砂災害警戒区域に指定されていない所が多かった。区域の指定が遅れた一因に、県が住民への説明を丁寧に実施し、反対者が1人でもいれば指定を保留状態にしていたことが挙げられる。
区域指定は都道府県に運用が任されているため、指定状況には全国で大きなばらつきがある。当然、住民の理解は必要だが、どの都道府県でもスムーズに指定が進むよう財政・技術両面で支援する法改正をめざす。併せて、調査によって危険性が判明した場合は区域指定の有無にかかわらず、すぐ公表する体制も検討している。
―今後の見通しは。
斉藤 PTでは、国が市町村に対して防災・減災対策を助言したり、市町村が“空振り”を恐れず住民に対して避難勧告を発令しやすくしたりする案が上がっている。住民の安全確保につながる内容とすべく議論を続けたい。
私と谷合正明PT事務局長(参院議員)は、先に行われた衆参両院の災害対策特別委員会で土砂災害防止法の改正を強く訴えた。安倍晋三首相と太田昭宏国土交通相(公明党)は、法改正に取り組む意欲を示しており、政府は改正法案を秋の臨時国会に提出する見通しになっている。自民党とも連携しつつ、今月中旬には法改正の提言を政府に提出し、意見を反映させたい。
【土砂災害防止法】土砂災害の危険性がある「警戒区域」と、住民の生命や建物に著しい危害が生じる恐れのある「特別警戒区域」を指定し、住民への危険周知や避難態勢の整備などの防災対策を進めるための法律。
【公明新聞より転載】