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衆院東日本大震災復興特別委員会で質問

質問する斉藤鉄夫

原発情報に国民の不信

「炉心溶融」隠しに怒り
校庭の被ばく量 基準(年20ミリシーベルト)引き下げを

 衆院は23日、菅直人首相らが出席して東日本大震災復興特別委員会の質疑を行い、公明党から斉藤鉄夫幹事長代行、石田祝稔政務調査会副会長が質問に立った。この中で両氏は、政府提出の復興基本法案の問題点を指摘したほか、東京電力福島第1原子力発電所1号機のメルトダウン(炉心溶融)の情報を隠していたのではないかとの疑惑などについて、政府の対応を追及した。

 斉藤氏は、政府が提供する東電福島第1原発事故をめぐる情報に国内外で不信が高まっている問題に言及。特に、同原発1号機原子炉圧力容器内の燃料全てが震災発生翌日の朝にはメルトダウンしていたと、2カ月以上経過した今月15日に発表したことに対して「国民を危険な状況に置きながら、一切言おうとしなかった政府に激しい怒りがある。首相も認識せよ」と糾弾した。
 さらに斉藤氏は、水位計や原発正門付近の放射線量率のデータを見れば、早い時期のメルトダウンを「首相は分かっていたはずだ」と追及。震災発生当初に菅首相と班目春樹・原子力安全委員長の間で海水注入の是非をめぐって「(制御されない状態で核分裂連鎖反応が起きる)再臨界の可能性はゼロではない」とのやり取りがあった点については、「メルトダウンを認識していたことに他ならない」とただした。その上で、最悪の事態の可能性を開示しなかったことが「国民が不信を持っている大きな原因だ」と批判した。

 菅首相は、メルトダウンについて「いろいろな意見があったことは早い時点から聞いていた」と弁明。しかし、原子力安全・保安院の発表が「政府の正式な形の考え方」と固執し、「(自分は)何か知っていてうそをついたり、黙っていたわけではない」と逃げた。

 一方、校庭を利用する際の放射線の被ばく量基準を年間20ミリシーベルトに設定したことについて、斉藤氏は「合理的な方法でできるだけ低く被ばく量を抑えるべきだ」と強調。国際放射線防護委員会(ICRP)の見解を踏まえ、「1ミリシーベルトにするのは可能だ」と訴えた。

 枝野幸男官房長官は「1に近づく方向に向けた最大限の努力を進めており、さらに強化したい」と答えた。

 

質疑要旨

「溶融」の発表遅れ追及
校庭の基準引下げ 子どもを被ばくから守れ

斉藤幹事長代行 政府の原子力災害に対する情報で国民の多くは信用できないと思っている。その最大のものは、メルトダウン(炉心溶融)だ。災害が起きてから2カ月以上たって、やはりメルトダウンしていたと発表があった。私たちをだましていたのか。大変危険な状況に国民を置きながら、一切言おうとしなかった政府に激しい怒りがある。この炉心溶融を、首相は内々知っていたのではないか。

菅直人首相 国民がかなり不信をもっていることは、本当に申し訳ない。原子力安全・保安院の見方は、燃料棒の3分の2程度は圧力容器の中で水に漬かっているということを前提として、いろいろ対策を講じてきた。水位がずっと低かったというのは、今月の保安院、東電の発表まで聞いていなかった。ウソをついたとか、黙っていたとかではない。

斉藤 首相はうすうす分かっていたはずだと思う。保安院は水があるから大丈夫と言い続けたが、実際には(3月11日14時46分の)地震、(その後の)津波の到着直後から、どんどん水位が下がり、(燃料棒は)露出し溶けて、12日6時ごろ、メルトダウンしたのではないか。
(保安院のデータによる)水位計は、だいたい(燃料棒の)半分以上水が漬かっているが、この後何日も続いている。(注水など)いろいろなことをしているのに水位計が一切動かない。(また、原発の)正門付近の(放射線の)線量率は、12日6時に100倍に上がる。今、明らかになっているデータでも、何らかのことが12日6時ごろ起きたはずだということが分かる。

首相 当初からいろんな意見があったことは分かっていたが、保安院、東京電力の見方が、間違っているというところまで、私に生のデータがあるわけではない。結果において、注水に全力を挙げて今日まで続けてきたことは、対応として大きな間違いにならなかったと理解している。

斉藤 (原子炉に設置された)水位計の不自然な動きや放射線量率の動きを見れば、政府はメルトダウンが始まっていたことを分かっていながら、隠していたのではないかと思わざるを得ない。
3月12日20時ころに海水の注水を開始したが、この前に政府内で海水を入れるべきかどうかの議論があった。その時のテーマは(海水を入れたら)再臨界するかということだった。水位計通り、水がほとんど燃料棒を浸しているのであれば、海水を入れたから再臨界するという話はあり得ない。水を入れれば水が減速材として再臨界に至るかもしれない。つまり、メルトダウンを認識していたのではないか。

首相 必ずしもメルトダウンを分かっていたのではない。最悪のケースを防ぐため、ホウ素を入れて海水を注入した。

斉藤 メルトダウンもあり得るという議論があったなら、最悪の事態を国民に示すべきだった。あの時点で、メルトダウンについて議論していたのか。

班目春樹・原子力安全委員長 燃料は一部溶けているだろうという認識は当然、持っていた。

斉藤 原子力安全・保安院でもメルトダウンについて解析していた。しかし、原子力安全委員会の方で「SPEEDI(スピーディ)」(放射性物質の拡散予測システム)を運用して拡散の計算をしなかったのはなぜか。

班目委員長 当初のSPEEDIの運用は、文科省であって原子力安全委員会ではない。

斉藤 3月16日以降は、原子力安全委員会がSPEEDIを運用することになっている。適切な情報公開が行われなかったことは大変問題だ。
(文科省が設定した)校庭の(放射線量の暫定基準値を)20ミリシーベルトではなく1ミリシーベルトにすることは可能だ。子どもの被ばくを抑えるため、首相は決意すべきだ。

枝野幸男官房長官 1ミリシーベルトに限りなく近づく方向に向けた最大限の努力を進めている。さらに強化していきたい。

【公明新聞より転載】

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