公明党の斉藤鉄夫税制調査会長は11日、BS11の番組「リベラルタイム」の収録で、2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入するため、制度設計の与党協議が続く軽減税率について見解を述べた。要旨は次の通り。
社会保障削らず財源を確保
【軽減税率の意義】
一、軽減税率は、社会保障を支える大きな柱である消費税を国民が理解するために必要不可欠な制度だ。消費者の痛税感の緩和は、消費税を国民が理解する根幹になる。法律には、低所得の方ほど負担感が大きくなる逆進性対策として位置付けられているが、消費税への国民理解はそれと同じくらい重い。
一、軽減税率制度が導入されなかったら、消費マインドは大きく下がるだろう。このことが経済全体や財政再建に与える影響を考えなければならない。
一、(軽減税率で恩恵を受けるのは高額所得層との指摘に対し)「額」で言えば高額所得者の方が軽減になるが、(所得に占める軽減額の割合を示す)「率」では低所得者ほど高くなる。そういう意味で逆進性対策になっている。
一、(低所得者対策として現金給付の方が効率的との考えに対して)消費税率8%時に低所得者などが対象の「簡素な給付措置」で還付金を配った。しかし、申請しないといけないため、例えば横浜市の場合、申請を忘れたのか、できないのか、対象者の66%しか受け取っていない。実は大きなマイナスがあるとも指摘されている。
【対象品目と財源】
一、(対象品目について)「酒を除く全飲食料品」となれば、分かりやすく混乱が少ない。与党協議で自民党は、導入当初は品目をできるだけ絞って(17年4月に)確実に実行できる体制で行うべきと主張している。公明党は、痛税感を緩和するという本来の目的を考えれば幅広くすべきと訴えている。
一、(対象品目を精米と生鮮食料品に絞るべきとの意見に関して)総務省の家計調査を見ると、現代人の食生活は加工食品に大きく頼っている。また、低所得の方ほど加工食品に頼っている傾向も見て取れる。加工食品を含まなければ(逆進性の緩和という)軽減税率の趣旨にそぐわない。
一、(財源について)自民党は消費税の枠の中で考えるべきだとしている。公明党は、税制、財政全体の中で考えるべきと主張している。(消費税率引き上げによる消費の冷え込みが)経済や財政再建に与える影響を考えれば、痛税感の緩和が達成される規模で行わなければ意味がない。
一、(軽減税率のために社会保障の充実を見送らざるを得ないとの指摘に対し)社会保障を犠牲にして軽減税率を実現するという考えはない。「税率10%時」に予定していた社会保障の充実は確実にやりたい。
一、(医療や介護などの自己負担額の合計に上限を設ける)総合合算制度をやめて、その財源を軽減税率に使おうとしているとの誤解があるが、この制度を否定していない。社会保障と税の共通番号(マイナンバー)を使って各人の収入や資産額、社会保障の給付額を把握できる環境が整って(初めて)機能する。これは随分先の話だ。将来的に導入したい。
一、(新聞や出版物について)公明党は対象にすべきと考えている。民主主義を育てる土台だからということで、諸外国のほとんどが導入している。食料品は命をつなぐためだが、活字は精神をつなぐため(に不可欠)と考えている。
一、(税率の軽減幅について)自公で、対象のものは8%に据え置くということで、標準税率は10%、軽減された税率は8%を前提に議論している。
【事業者の納税事務】
一、欧州各国などが採用するインボイス(消費税額などが示された納品書)制度は、益税の問題など日本の消費税制度が抱える矛盾点を解消するものなので、最終的にはこの方式をめざす。しかし、急に移行できないので、猶予期間を置いて準備する必要がある。(その間の経理方式として)納税事務を行う事業者にも納得してもらえる簡易な方法を自公で議論している。
【今後のスケジュール】
一、(軽減税率をめぐる与党協議は)当初、11月中旬には(大筋の)結論を得るとしていたが、多少延びる可能性もある。どんなに遅くても、12月10日前後の与党税制改正大綱(の決定まで)にはまとめたい。
【公明新聞より転載】